Twitterを見ていたら衝撃のニュースが飛び込んできた。
ドリフ:驚きの大仕掛け 「全員集合」ステージセット披露 - 毎日新聞
【魚拓】ドリフ:驚きの大仕掛け 「全員集合」ステージセット披露 - 毎日新聞
東京・調布の市文化会館たづくりホールで21日から
かつて国民的人気を博したテレビのバラエティー番組「8時だョ!全員集合」。ザ・ドリフターズのコントとともに視聴者を楽しませ、時に驚かせた大仕掛けなステージのセットデザインを振り返る展覧会が21日から、東京都調布市小島町2の市文化会館たづくりホールで開かれる。
「全員集合」は1969~85年、TBS系で土曜夜8時から放送された。全国のホールを会場にした公開生放送で、最高視聴率は50.5%。「お化け番組」とも言われた。
セットを初回から15年間担当したのはセットデザイナーの山田満郎さん(43~2016年)だった。ステージの上で本物の車が宙を飛び、建物が転がるなどの「屋台崩し」や、コント終了後すぐ歌のコーナーに転換する「盆回り」など大仕掛けの数々で番組を盛り上げた。80年にはすぐれた舞台・テレビ美術家に贈られる伊藤熹朔(きさく)賞をバラエティー番組史上初めて受賞した。
演劇や建築とは異なり、毎週違う場所で一夜限りのステージを制作する過酷な条件を、山田さんは、テレビの挑戦の場ととらえ、常に「見たことのないもの」を形にしようと、笑いのアイデアの詰まった図面を引き続けた。昨年6月に73歳で亡くなったが「若い後輩たちの役に立てれば」との遺志に応え、学友や元同僚らが尽力。非常勤講師を務めていた東放学園専門学校(杉並区)テレビ美術科の卒業制作展の一角で、展覧会が実現した。
デザインの原画や大道具の「道具帳」、舞台写真や模型など山田さんが保管していた資料約100点がいずれも初公開される。次男太平さん(45)は「テレビを囲み、お茶の間が笑いに包まれた時代を懐かしんでほしい」と話している。24日まで、入場無料。
えっ!あの全員集合のステージセットが見れるの!?しかもあの「たづくり」(※調布の文化センター。一時期調布に入り浸っていた時期があり、中に入っていた図書館をよく使っていた馴染みの施設)で!?
どうやら、セットデザイナーを担当してた山田満郎氏が調布在住だったことで調布の開催が決まったらしい。非常勤講師として在籍していた東報学園専門学校の尽力により、テレビ美術科卒業制作展の併設開催という形になったそうな。
しかし、肝心の市文化会館たづくりホールの公式サイトには全くと言っていいほど情報がない。真偽があやふやだったが、なんとか東報学園の卒業制作展公式ページ(今は既に閉鎖?)にて開催を確認。現地へ赴くことを決意。
しかし、こんな素晴らしい話題性もあり文化性もある企画、行政が盛り上げずにどうするよ。
残念ながら開催期間は平日のみ。無理やりスケジュールを縫って場所を確保したのか、講師や学生の土日対応の問題からなのか。土日であれば行けたのに、という人は多かっただろう。
なお、私は仕事よりもドリフだろ、ということでもちろん半休(仕事がたまっているもんで・・・)取得し、最終日の2017年2月24日に訪問。
朝イチ(というか開始時間前) に現地に到着・・・が、Twitterの反響の大きさとは真逆のひっそりとした紹介ぶり。
隣でやってる女性視点の防災対策イベントに来た人でもドリフ展やってるって聞いたら来た人多かっただろうに。
2Fに上がり、会場に行ってみると妙に狭い会場。
入口手前のパネル
入ると東報学園専門学校の卒業展がまずお出迎え。広さ的にはちょっと狭いコンビニぐらい?奥を見るとやや人の集まっているエリアが。
外観を撮影されている方がいたので紹介
https://twitter.com/autani/status/834620431827034113
行ってみると、思わず「え!?これ!?」と言わんばかりの超小部屋。
広さは・・・駅ナカコンビニ(NewDays)ぐらいって感じ??別に紹介するつもりだが、オリンパスの常設ショールームの別部屋で開催されていたなぎら健壱の写真展のスペースよりも狭いw
というか、舞台セットの再現はどこだ!?
ここで事実が発覚。舞台セットの再現、はなく、あくまで舞台セットの図面や写真を紹介する展覧会だった、ということだったそうな。同じような勘違いをしていた人は多かったらしく、来場者ノートを見ると最初の書き込みがまさに同じような勘違いをしていた人だった。
Twitter上で批判をする人まで。
これは別に主催者が悪いわけではないよな・・・。ネット記事の書き方が悪いというか、確かに読み込むと記事には舞台再現なんて一つも言っていない・・・が、”「全員集合」ステージセット披露”という見出しは問題。所詮は毎日新聞か。
しかし、それはそれとしても(結構ショックだったが)展示内容自体は非常~に素晴らしい!
というのも、舞台セットの緻密な設計図面が実際の写真と並べられたリしながら、所狭しと紹介されているのである。
さらに目を引くのは、伝説の自動車が飛び出てくるコントのセットが、実際は安全性や構造の検証のために事前に屋外で試作され、実際の車(もちろん運転手はスタント)を走らせて評価されていたことの紹介や写真である。
それによると、舞台という特性上助走距離が不足するために、高く飛べない上に着地地点のセットを広くつぶしてしまう。その解決策として踏切板を設置し、演出課題を解決した、というものだった。
考えてみたら、確かに一つのコントの中で舞台装置のいろいろなギミックがあった。それを改めて認識できるほど、図面には細かな作りこみが記載されており、またその緻密性に驚く。
また、舞台セットの裏には必ずピアノが配置。要は回転セットの裏側にバックバンドの演奏台があったということだ。これはリアルタイムで見ていた人には常識なんだろうか?
再放送やら抜粋版でしか見たことのない人間にはそこは初めて知る新たな世界だった。
ん?てことは盆回りを含むすべての演奏が生演奏ってことか??
そんななかで、図面の右端を見ると、やれ渋谷公会堂だったり、なんちゃら市民会館だったり。
固定のスタジオではなく、各地方の市民ホールで都度、これらのセットを組み上げ、ギミックを動かし、子供たちを熱狂させ、豪快に壊していったということである。
そして、その度に何らかの形で安全性や動作の検証をしていたのだろう。
恐るべき世界である。
破天荒でダイナミックな全員集合のコント。しかしその裏では地道に検証し、安全性を担保し、そして実現した、ということを知りえただけでもこの展覧会は価値があったと思う。
東報学園専門学校の生徒たちにとっても非常に良い教材のはず。
更に興味を引いたのが、娘さまの開催趣旨紹介のパネルである。
簡単にかいつまんでみると、
・幼少時に「また来てね」と言っていたことで父に恥をかかせてしまったが、今思えばそれだけ家にいないということで、TVマンとして多忙の極みだったということ
・(山田氏は)お笑いに携わるのが大好きな人間だったが、家でよく嘔吐をしていたぐらいプレッシャーがすさまじかった
・入院時も葬儀時も、ドリフに携わっていたことを伝えると看護師から葬儀屋まで、とにかくドリフに関する思い出を楽しそうに語ってくれたこと、挙句の果てには亡骸を焼却場まで運んでいる状況にも関わらず、奥さまと霊柩車の運転手とでドリフについて談笑が始まったこと。
・おまけにその霊柩車の運転手がわざわざ葬儀会場まで見に来た
・父はこんな野暮な話はするなと怒るかもしれない
・葬儀時の運転手との談笑を聞いて、後ろにいる父は喜んだだろう
といった具合。その人柄をよく示した内容で、とても印象的だった。
あとは、家が転がる舞台装置の構造を示した簡素な模型(壁面の裏が円柱形状になっている)だったり、「ナチ対ドイツ 地下水道の決闘」の模型が展示されていた。
特に後者は舞台模型というか、もうジオラマ。なんというか、見ているだけでワクワクするような構造になっている。今時と比べて超リアルさはないが、世界観が広がるジオラマ模型として素晴らしいものと感じた。
東報学園専門学校の卒業展示を見ると、既にある作品の立体化みたいな内容が多かったが、このような世界観を作りあげる、というテクニックを是非とも今後の現場の知識・経験をもとに学んでいってほしいと思った。
最後に、全員集合のDVDが再生されているコーナーがあった。
展示されている舞台セットの観点で見ていると、確かにものすごいギミックであり、一つの舞台セットの中で多彩なコントが数多く繰り広げられるような作りになっていることを実感する。
しかし、それ以上にドリフに目が移ってしまう。同じく見入っている人も、思わず笑い声が声に出てしまう。やはりドリフの笑いは芸術的で完璧だ。
志村・カトちゃん・毎度出てくる牛乳。この組み合わせで笑わずにいられようか。
このドリフが浮かないように、さらには目立たずに、屋台骨としてガッチリ支えているという点で、山田氏の舞台セットのすばらしさをより感じることができる。
気が付けば、開場から30分~40分。金曜とは言え、平日にも拘わらず狭い会場はあっという間に人でいっぱいになっていた。20人強はいたかな?午後の終了間際はもっと人が多かったろう。
とにもかくにも、非常に貴重で、かつ有意義な展覧会であったことは間違いない。同様の展示会をまた開催してくれることを期待するし、やはり実物再現セットを見たいというのが本音。今のTVではもはや作られないであろう、そのドリフの世界観をぜひとも感じさせてほしいというのが思いである。