てなもんや四三式試製飛行機計画要求案摘要

モブが好きです。例えるならラーメン界で言うくるまやラーメンです。

「のらくろであります!田河水泡と子供マンガの遊園地」展に行ってきた

令和元年にのらくろ展ですよ!

いや、令和元年だからこそ、なのかもしれない。


のらくろ関連イベントって、2017年の骨董ジャンボリーで開催された「のらくろの世界」展以来かしら?


川崎市民ミュージアム(何故?)で9月18日~11月24日で開催。早速行ってきた。


本当は関連イベントの「のらくろ・アニメーション・マニアックス講座」に参加したかったのだが、都合で叶わず。
貴重な資料の展示という趣旨なら、1度だけでなく何度かやってほしいんですけどね。

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のらくろが街中に


川崎市民ミュージアムには初訪問。武蔵小杉からバスで向かうのだが、武蔵小杉駅にデカデカとのらくろ展の広告が。本当に今は令和なのか。

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隣の等々力ではフロンターレの試合があるらしく、ユニフォーム姿の家族連れが多い。ちょっと遠いのが難点。武蔵小杉界隈の発展で全体的にファミリー層の多い街。ぼっちオタクにはちょっと居心地が悪いw


川崎市民ミュージアム到着。

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非常に立派な施設。流石川崎市だなあ・・・。ここでものらくろ展の掲示が大きい。かつてここまでのらくろPUSHしてたイベントがあっただろうか。今は戦時中なんじゃないか。

ちなみに自由に使えるカフェテリアブースもあり軽食も販売しているので、休憩とかでゆったりするのも最適(当日中は再入場自由)。


展示内容について

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観覧料は700円と一丁前の価格。正直期待はしていなかったので高いんじゃないの、と思ったのだが、思ったより奥に広く、展示ボリュームに驚いた。これなら700円は納得だ。

とは言っても、のらくろだけでそこまで資料がある訳ではなく、同時代の漫画史にも結構なスペースを割いている。 なので、のらくろメインに据えた漫画黎明期展というのが正確かも。

 

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田河水泡のキャラクター一同のパネル。ここだけは撮影可能だが、その他は撮影不可。


以下は展示内容についてのネタバレ含む所感。訪問予定の人は最後のグッズの項まで飛んでもらって構いません。


最初期


最初は田河水泡が登場する前、明治~大正あたりの漫画の誕生期について。

日本最初のコマ割り漫画は、本田錦吉郎の「藪をつついて大蛇を出す」(1881年)らしい。吹き出しとかがある訳でもなく、新聞の一コマ漫画とか絵本の延長線みたいな感じ。

この作品に限らず、展示されているすべての1ページコマ割り漫画は現代ほど洗練されていないので、起承転結もないし今の子が見ても面白いと思うことは少ないと思う。そういうのが確立したのってサザエさんあたりなのかね。


当時は漫画と呼ばずにポンチ画と呼ばれていたそうな。新聞で主流となっていた風刺イラスト(浮世絵)をポンチ絵と呼んでいたらしいが、それが子供向け漫画向けに使われていったような感じだろうか。

Wikipediaポンチ絵の記事を見ると「明治20年代末から30年代にかけて、子供だましの絵と化したポンチは」との記載があり、この記事編集した人間が相当に子供向け漫画を小馬鹿にしている様子が見られて興味深いw

 

ちなみに当時は横書きは右から表記。なので「戦争ぽんち」とか「笑いくらべポンチ画」とか見るとテンション上がる(知能指数低い)

 

そこから「漫画漫文」というスタイルに変化。相変わらず吹き出しとかは無いが、イラストとコミカルな説明文を併記する。ゆるくした絵本みたいな感じか。この「漫画漫文」というスタイルを生み出したのがなんとかの有名な岡本太郎の父だとか。びっくり。


次に日本初の日刊連載4コマ漫画「正チャンの冒険」第1回の実紙面展示。実はこの前日発行分にまさかの第2回が間違って掲載されてたらしく、お詫び文が併記wwwそんなことあるのwww


同時期は海外漫画も和訳されて紙面に掲載されることもあったらしく、ジョージ・マクマナスの「親爺教育」と「正チャンの冒険」が当時の人気作だったんだとか。個人的に見る限りは「親爺教育」の方が内容が洗練されている気がする。


田河の時代に至るまで、よっぽどの人気作デない限り単行本化というのは殆どされないらしいが、「正チャンの冒険」は七の巻までの単行本が展示。相当に人気あったんだろう。ただ、「初の国民的キャラクター」という定義だと、やっぱりのらくろには劣っちゃうのかな。

で、この「正チャンの冒険」の単行本なのだが、五の巻あたりからどうも表紙の具合がおかしい。そもそも正チャンいなくねえか?六の巻なんてリアルな西洋の騎士だし、七の巻はこれまた現代の騎馬兵。急にどうしたんだ正チャン。


そして、この頃から戦後に至るまで漫画史を語る上で外せない「赤本」が紹介されていく。「赤本」と言っても受験用の過去問集ではない。要は模倣誌、パチモンである。昭和までパチモンプラモだとかパチモンアニソンカセットテープが販売されていたぐらいなので、文化としては相当に長い歴史を誇ってたんじゃないか。

目立つように表紙を赤色にしていたことから「赤本」と呼ばれたそうな。装丁を丸パクリした上で価格も本物から数段下げた形で販売されていたそうなので、当時のデザイナー的にはイライラしたんじゃないかとは思われる。

もちろん「正チャンの冒険」の赤本もあって、実際に展示されていたのだけど「凸(デコ)チャン将軍」とかまで行くと素直に笑うw


ちなみに、海外漫画、特にミッキーマウスやベティちゃんあたりはのらくろと同等以上に人気だった、とのこと。会場ではのらくろのルーツになったパット・サリバンの「本社特約米国漫画黒猫フェリックス」(1930年・時事新報社)も展示。
作品の雰囲気は米国アニメがそのままコミックに落ちたような感じで、当時の日本の絵本的な作品とは異なる。そういえばフェリックスガムって長寿だよな・・・。

 

田河の登場


いよいよ本編。田河水泡、元々前衛芸術やっていたらしく当時の写真などが展示。貴重だなあ~。元々画家を目指して美術専門学校行っていた方なので、そう考えてみると、たしかにのらくろの作風や色使いもアートチックな要素を感じるし、単行本の装丁も無茶苦茶洒落ていたなあ。


のらくろ以前に発表済み作品をまとめた短編集「漫画の缶詰」を刊行。これが10万部販売。10万部って・・・凄い。 展示説明にも記載されていたが、のらくろ以前から既に大ヒット漫画家だった。あまりそういう印象が無かったが、やはり凄い人なんだ。

 

そして生原稿が!!講談社所蔵品らしい!!!!ひええ水彩絵の具で着色されている!!!!!!


「入営」の生原稿では植字がされていない鉛筆の文字まで読める。

 

「肉弾戦」では「この背嚢は消してください」とあって、やはり全体構図みたいなところは意識していたのかなと感じさせる部分も。「嗚呼」の文字をに「削る」と
メモがあったのは、鳥と書いてしまったのかな、みたいな。

 

のらくろが生み出した手法と文化


初めて知ったのだが、この時代の主流となっている1ページ3段構成は田河水泡が確立した手法らしい。そしてコマを横分割する時は子供にコマを読む順番を意識させるために余白を黒で塗りつぶすという手法も使っているんだとか(「のらくろ」で画像検索すればどういう手法かわかると思う)

全然気が付かなかったが、非常に考え抜かれて描かれていた作品なんだなと感じた。


単行本表紙原画も展示。やっぱアートだよなコレ。


単行本、漫画と侮るなかれ、装丁が豪華なだけあって当時としても非常に高価なものだったらしい。1冊が1円50銭。これは米10kgと同価だったとか。4,000円とか5,000円ぐらい?

なので、雑誌の別冊付録として簡素ながら漫画本が付くと、非常に子供たちに受けが良かったらしく売上にも影響したとか。


そしてその別冊付録の文化ものらくろがルーツ!2月に売上が落ちる(1月が最も売れるらしいのでその反動?)のだが、そのテコ入れ策としてのらくろの別冊漫画を付けたら大成功した、という。当然、他誌も真似するので別冊漫画が当たり前になったそうな。

 

のらくろ伍長以降は青・赤・黄色の3色カラーが基本となったそうで、モノクロ原稿を青色印刷(!)し、赤と黄色を着色していく、という印刷手法を用いているらしい。昭和初期ですよ。凄いな・・・。


漫画を低俗なものとして批判する風潮が根強かったそうで、それに対する婦人子供報知の反論記事(與(あた)えて良いか?悪いか?子供の喜ぶ流行の漫画本 私の見たのらくろ伍長)も展示。まあ、半分広告に近い記事で、絶賛しかしてないのでそれはそれで記事としての紹介で良いのかは微妙な所。


また、のらくろ田河水泡の他作主人公がゲスト出演しているシーンも紹介。展示会では「田河水泡ユニバース」と呼称していたが、要はカメオ出演的演出を当時既に実現していたということ。(最初スター・システムかな?って思ったんだけど、別の役柄やスピンオフでもないしちょっと違うっぽい。むしろ戦後は別物語として展開されたのらく
ろ自体がスター・システムなのかも


やっぱりあるのらくろ赤本

本展示は赤本を含む漫画文化の紹介なので、赤本もきっちり紹介。それこそ「のろくさ」「くまざる」「クロネコ」 「のらくら」「のらくま」・・・w
しかもどう見ても「のらくま」ミッキーマウスなんだがw

ちなみに先述した「正チャンの冒険」の赤本で、まさかの「ゴリラノポンチャン」が並んでて笑ったwww

 

赤本については、のらくろの模倣からオリジナリティーを確立していったとして、やたらとナカムラ・マンガ・ライブラリーを推していた。


婦人誌に漫画?

当時は漫画は子供が読むもの(と言っても現代でもつい最近の話だと思うが)。なのに、婦人誌(婦人倶楽部)に田河水泡の「凸凹黒兵衛」が別冊付録として付いていたという。

これはどうも子供に読み聞かせられるために、という目的だったようで。子供からのおねだりも期待してのものかもしれない。婦人倶楽部自体、昭和初期に100万部販売していたらしく、「凸凹黒兵衛」も4年間毎月付録になっていたそうなので、そういう意味でも(あくまで子供向けとしてではあるが)普通の大人にはある程度漫画は文化として受け入れられてたようには見える。

まあ、のらくろ単行本も親が買い与えない限り小遣いで買えないもんな。


現代でもよくある話だけど、「漫画に対し批判的な声が強まり~」という話題って、やっぱりマスメディアが煽ったごく一部の過激派の意見でしかないのかもしれない。


戦争の激化とのらくろの打ち切り

弟子の紹介コーナー(長谷川町子の漫画にどう見てもブル連隊長がいるんだが・・・)や子供向け新聞の紹介が続く 。

昭和十三年の子供向け新聞の「セウガク一年生」の広告、オマケに「クミタテ イサマシイ ヒカウテイ」のオマケが付いているらしくて死ぬほど欲しい


そういった文化の中で、内務省から「児童読物改善ニ関スル指示要領」が発布。現代語訳が併記してあってわかりやすい。


過剰な懸賞広告の禁止(宮内庁御用達だとかw)という真っ当な規制だけならまだしも、小さい文字を使うのをやめる(これ微妙なラインだけど表現の自由としてはアウト)に始まり、赤本みたいな低俗な表現はNGだとか完全なる表現介入へ。

 

当然ながら、冒険活劇とかコメディタッチの漫画は減り、絵本みたいな内容に変わると共に漫画という呼称も消えていく。ただ、代わりに科学漫画のジャンルが発展したというところが興味深い。ある意味、コレがなかったら手塚治虫のSF漫画は生まれなかったかもしれない。

 

先述した「セウガク○年生」も「国民○年生」に変わったりと、戦時色が強くなり学童誌が幼年版「丸」みたいな感じに。


この展示では、のらくろの打ち切りについては表現規制よりも用紙統制の要因が大きかったとしていた。「国民○年生」の遷移も展示されていたが、時期を重ねるごとに相当薄くなっていった(薄い本ですが同人誌では有りません) 。

 

人気が落ちた雑誌は軒並み用紙統制の煽りで当局から廃刊を指示(!)されたらしいが、少年倶楽部は売上が落ちなかった(凄い)。で、用紙統制を進めたい当局はのらくろが人気なのが原因だとして、打ち切りにさせたという。無茶苦茶すぎる。

 

そもそも軍隊でドジを踏む=軍部が恥をかかされる、という点を避けて、打ち切り時点では既に退役して探検隊が始まっていたそうなので「軍隊をバカにするのは何事か」が直接の打ち切り原因ではない感じ。そうは言っても睨まれていた可能性はありそうだけど。

新展開が始まった矢先に打ち切り、という話なので、編集部は連載を続けようとしていたのは間違いなさそうだ。田河水泡はその後、戦後に至るまでは仕事が無くなってしまったそう。


戦後は漫画誌や赤本が大量に発刊。規制の反動だろう。「漫画少年」の「子供は漫画が好きだ」という一節を強調していた。非常に丁寧な漫画黎明期の紹介ではあるが表現の自由、という点を強く意識させられる展示でもあった。

 

やったぜのらくろグッズ新作だ!

売店では、のらくろグッズが並ぶ。本当に今は令和なのかよw

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特に今回想定していなかった図録があったのは有り難い。相当なボリュームで、年表的な情報も充実。のらくろ研究の最新資料になるだろう。ファンは間違いなく今回入手すべし。

 

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Tシャツも並んでいたので期待したのだが、どうやら森下文化センターのものを持ってきたようだ。顔全面プリントTシャツ微妙なんだよな・・・もっと突撃してるのらくろのイラストとかで普通に着れるTシャツ作って欲しいよ。トートバッグやエプロンも同様。

 

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新作グッズはクリアファイルと絵葉書。クリアファイルは使いみちが無いのでパスして、絵葉書を購入。無印良品でアクリル製はがきスタンドを買うと机の上のインテリアとして使えるので絵葉書はおすすめ。

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ただ絵葉書も「そのシーン選ぶか??」というセレクトでちょっと微妙だったかな。素直に表紙デザインの絵葉書化でも良かったんだが。まあ、突撃シーンの絵葉書は神。

 

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後は既刊の復刻本など。

 

個人的にはもうちょっとグッズほしかったな。とは言え、何年ぶりの新作のらくろグッズなんだろうか、ってぐらいなので感謝は感謝。

 

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家についてから気付いたけど、無料のリーフレットもすごいこだわり。

 

展示は漫画史メインでのらくろ半分みたいな感じだったけど、全体的に質も高かったし、総合的には満足。アニメーション公開はまたやってください。

 

 

ちなみに向かう途中に野坂昭如滝田ゆうの「怨歌劇場」を読んでいたんだけど、「軍歌」に偶然にものらくろの一節出てきた時は運命感じましたね。滝田ゆう田河水泡の弟子ですしね。