前編の続き。実際の製作に入る。
骨の折れるアクリルカット
ステッカーの位置を確認した上で、傷をつけないように袋とマスキングテープで保護。
マスキングテープを貼る時はカッターマットとかの方眼線を目印にするとやりやすい。
で、ステンレス製定規を使ってカット。
やってみるとわかるのだが、スッ・・・スパッ!ってノリではない。鉋(かんな)がけのような感じで、スッと引くと糸くずがシュルッと出てくる。これを何度も繰り返して削っていくようなイメージ(「掘る」という表現のほうが近いか?)。
1/3ぐらい削ると次の工程に移れるらしいので、3mm幅なら1~2mmぐらい。余裕っしょ!と思ってたが、これが案外に骨が折れる。5回ぐらいスッってやると糸くずまみれになるし、糸くずもすぐ粉々になるし、30回ぐらいスッってやっても全然削れてないし。
油断するとブレてアクリルを傷つけかねないので、定規を押さえる力もいるし、かなり面倒くさい。更に、ある程度削っていくと、どうしてもスッの入りと出の所の削りが甘くなることもわかった(断面がすり鉢状になるイメージ)。カッターを抜く時に浮かすのではなく机の面に叩き落とすように抜かないとダメなのかも。入りの部分は向きを変えて同じようにスッを繰り返すしか無いが、それでも水平にカットするのは難しそう。
両方向でスッスッスッスッやってると流石に疲れる・・・。ある程度縁の削りが甘いが、中央部はそれなりに削れたので妥協する。
次は切り離す側をペンチで折り曲げる。パキッと、と言うと軽い力で折れそうなイメージが沸くが、実際にはアクリルにペンチ傷が付くぐらいに力を入れないと折れなかった。なので、間違ってもステッカーを貼る側のアクリルをペンチで掴んではならない。
断面を見ると、やはりキレイに水平にはならず、削りの甘い縁部分が山なりになるような形状になっていた。なので、ヤスリがけは断面を整えるぐらいのノリで考えていたのだが、結構気合を入れて削るためのヤスリがけになりそう。
この辺を楽にしようと思ったら、1/3とかじゃなくて4/5ぐらいカッターで削らないとダメなのかも。いずれにしても楽にカットできる代物ではないという感じ。
ヤスリがけ
保護のために背面部分もしっかりマスキングテープで保護して、#180の紙やすりでゴシゴシ削る。消しゴムに巻いて手持ちで磨いたけど、ちゃんとそれなりの固さのある木片に巻いて、木材を土台にしてやったほうが良かったかな。これも削る量が多いのでそれなりにしんどい作業。
完全な水平まで持っていくのは諦めて、接着に難が無さそうな程度のそこそこのレベルで妥協。#600で仕上げ磨きしてから水洗い&キッチンペーパーで拭き上げるとキレイになった。透明感もいい感じで出てる。
同様に台座をカット&ヤスリがけ
死ぬほど面倒くせー!
ってのが分かったけど、台座のカットもやらなければならない。こちらは6mm厚なので更に大変。
シコシコ削って、折る。余った部材は今後なにかに使おう、と思っていたが、ペンチ傷が付いてしまうので使い物にならないかもしれない・・・(面倒なのでマスキングテープの下の傷状態がどんな塩梅かも確認せずに放置)。ヤスリがけも同様に行ったが、先程のとは違ってちょっと曇ってしまった。ヤスリがけが足りなかったのか、もう少し粒度の細かいヤスリを仕上げにかけるべきだったのか。
画像は完成品より。ちょっと曇っている。
こちらも完成品から。手を加えてない側面方向は背景が透けて見えるが、カットした面を含む正面方向から見ると背景が透けない。
ただ、台座側面を水平に見ることもない(どうせ見下ろすか見上げる形)し、そこまで目立たないので、そのあたりは妥協した。大事MANブラザーズも言ってたけど、妥協が大事(大事MANブラザーズはそんなこと言っていない)。
蒸着!
蒸着ではなく接着。カットだけで満足したのでこのまま放り投げそうになったけど、今やらなければもうやらない可能性が高い(飽き性)ので接着までやることにした。
キッチンペーパーで拭き上げた後にキッチリ乾いたことを確認して接着準備。
アクリサンデーの接着剤を開封すると、接着剤と注射針と注入器が出てきた。注入器に接着剤を注ぐが、余裕で漏れる。スポイトが無いとダメだなコレ。接着剤が手についたが、想像していたよりもサラサラしていた。どうやらこの液自体に接着成分が有るわけではなく、アクリルを溶かす溶剤というのが本質らしい。溶けたアクリルで接着するイメージ。なので、接着剤の準備中にアクリルに液が付着しないように注意する必要がある。
アクリルはT字に組み立ててマスキングテープで仮止め。
さて、接着剤を塗るぞ~と思って横にしてみたらポタタタタタッと勢いよく垂れまくっている。なにこれ・・・。注入器の問題なのかなんなのか。もしかして注入器を組み立ててスポイトのように吸い上げるのが正解だったのか?
よくわからないけど、こんなのをアクリルに近づけたら関係ない部分に付着しまくるよ・・・
そもそも粘度のない溶剤なので、ちゃんとした注射器を使っていたとしても怪しい気がするが・・・。
とりあえず、やるしかないので、極力液垂れがしないように注意しながら決行。立ててる部分のアクリルを少し持ち上げ、ササッと塗った。幸いにも比較的きれいに塗れたが、2点ほど液垂れして白くなってしまった。目立たないところだったから良かったものの、やっぱり粘度のない溶剤を塗るのは難しすぎるぞ。
こちらも完成品から。
こちらの上部にある赤丸は上の画像のものと同じ。
今考えると、接着部以外のところをきちんとマスキングしないとダメだったんだろうな・・・。
完成
30秒ほどで固着するが、完全に接着されるのは24時間後らしい。ほどほどのタイミングで、ステッカーを貼って完成。
うーん、思ったより良い出来だ!台座の曇った面や白色化した部分が目立たなかったのはこれ幸い。また、やはりアクリルの透明度が高く、全体的に見栄えが良い。映画祭とかでよく見るクリスタルトロフィーみたいな。プラ板だったら見劣りしてたと思う。
背景にも拘ると、なかなかに映える。
自作アクスタについての考察
既製品アクリルの活用をすれば比較的カロリーは抑えめに自作アクスタを作ることが出来た。とは言っても、やっぱり素人には結構キツイ。今回はたまたま良い感じに出来たが、カットはともかく接着剤垂れ次第で大惨事になってた可能性もある。それに、自分は恵まれていたけど、アクリル商品が充実しているホームセンターが近くにあるとも限らないし、通販だと実物をチェックできないので工作できそうかどうかの具合も見極めできないだろう。
(それでも通販で買えるような時代になってることにビックリだが・・・。活用するならハンズとかよりケーヨーデイツーとか運営しているDCMの通販サイトが便利そう。)
台座についてはセリアでオタクグッズとして「アクリルキーホルダースタンド」が売っている。コレを使えば、今回のようなDIYをせずとも円形アクリルをノーカットでスタンド化することも可能。
100均セリアのマイコレ「アクリルキーホルダースタンド」商品情報・サイズ【100円】
ただ、リンク先の画像を見てもらえれば分かる通り、残念ながらスタンドに当たる部分は白色がかったポリエチレン製になっており、お世辞にも見栄えが良いとは言えない。一箇所でも安っぽいと全体的に安くなってしまうのがよく分かる。 やっぱり台座も含めたクオリティを求めると、今回みたいなやり方しかないのかな、とも思う。
また、カッターを使ってみて、細かい加工はやっぱり無理!って印象。市販されているものだとか業者に発注したものだとかは差し込み式になっているのだが、差し込み部分だったり台座の受け口だったりの自作は通常のアクリル用のカッターでは無理だと思う。ヒートカッターで切らずに溶かしきるようにしたら、もしかしたらいけるのかもしれないけど、ヤスリがけも含めて精度とか高めるのはなかなかキツそう。
元になるイラストがあれば外注が最もクオリティが高いのは間違いないが、今回みたいにステッカーを貼り付ける目的だと、サイズ合わせが最大の難関になる。裏返して言えば、コストと時間の問題。今回は試算時に2回見込んで4,000円と出したが、2回で済むという保証も無い訳で、長期間かけて6,000円やら8,000円かけて成果なしってリスクも有る。
数を多く作れば1つあたりに積み上がる試作コストも下がるので、同好の士が5人とかいればチャレンジできる領域には入ってくるかもしれない。試作3回で済めば試作コストは1つあたり1,200円ぐらいになるし。ただ、それでも結局トータルコストは1個あたり3,200円にもなる訳で、安い買い物とはとても言えないのは事実。
あとは何十個か作って「〇〇ステッカー対応スタンド!」みたいにイベントで頒布・・・とか?そこまでやればコストはぐっと下がると思うけど、みんながみんなそのステッカーを買ってる訳でもないし、そもそも何十個も捌ける大手ジャンルの場合は大っぴらにやりすぎると同人の範疇超えて刺される可能性があるのでなんとも。
ただ、ステッカーは十分自作アクスタとして進化できるということと、部材としてのアクリルはとても良いものだということは分かった。透明度が同等で、加工しやすくて安い部材は無いのかな?とも思ったけど、昨今のコロナの飛沫防止ボードでさえこれだけアクリルが使われている現状を考えると、現状ではアクリルが最良の手段なんだろうな。
もし、他にもTVチャンピオン手先が不器用選手権自作アクスタ大会の道を進む人が居たら、是非とも情報交換をしたいところ。