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アニメ平家物語を見てから原典を追ってみた 10話・最終話

アニメ平家物語平家物語初心者なので、途中から原典を参照しながらTwitterに感想を書くようにしていたんだけど、そのうちに原典の感想みたいになってしまった。10話と最終話だけで6,000~7,000文字ぐらい行ってしまったのでこちらにまとめて投稿することにする。

思い切って1話から再履修して全話まとめたい・・・ところだけど、「アニメが旬なうちに」一旦この2話分を先行で。

つーか、この10話、最終話の分だけでも膨大な時間がかかってるので、1話からやり直してたらとてもじゃないけど年内投稿とか無理な気がする。

原典も隅から隅まで読み込んだ訳でもなく、かいつまんで読んだだけなので、読み間違いや解釈違いとかはあるかもしれない。

ただ、アニメを見たら、流しでもいいから原典を読んで、またアニメを見ると、新たな気づきがあるというか。滅茶苦茶に世界が広がる。

今回の10話・最終話だけでも思うところが多かった。やっぱりエンタメを楽しむためには学識って必要だな…。

アニメ作品として

まずアニメとしての評価。和なんだけど和に寄せてない印象で、ED含めてめちゃめちゃカッコよいアニメだと思った。「琵琶法師」という古臭くとっつきにくい存在も、「吟遊詩人」(みたいなとっつきやすさ)に昇華されているし。アニメーションは流石のサイエンスSARUというか。千葉繁が真面目な役どころってのも興味深い。

特番で語られていたけど、平家物語はいろんな語り部の目線で延べられるらしいのだけども、あっちゃこっちゃしちゃうので「びわ」というキャラクターを一本立てたのだと。

このびわが、シンプルなキャラデザなのに物凄く表情豊かで動きがあって良い。そして悠木碧の琵琶語りが素晴らしい。でも同時にCMで川尻こだま(CV:悠木碧)が流れてくるのでズッコケてしまうのだけども。

オリジナル部分も良い。平家を恨み、殺されること上等で呪いめいた忠言をしようとしたびわ。おもいがけずに重盛や徳子達の人間性に惹かれていき、その行く末を語り継ぐ決意をする。「序盤で不吉な物言いをしてすぐ退場する預言者的な立ち位置のモブ」ってよく創作で見かけるけど、まさかそのモブが主人公になるような展開とは。斬新だ。

外配信もされているそうなので、これをきっかけに日本人だけでなく、日本の古典文学にハマる外国人も増えるんじゃないだろうか。

原典の参照について

3話の祇王のところで、誰が誰やら、何が語られてるのかやら、ついていけなくなり、解説を探したところ、京都大学が「挿絵とあらすじで楽しむお伽草子 第7話 祇王」というものを公開していたのを発見。

挿絵とあらすじで楽しむお伽草子 第7話 祇王 | 京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

原典もなかなかおもしろいやん!アニメの描写はそういう意味だったのか!となり、以降、原典を参照しながらアニメを視聴していた。

この京都大学のサイトが全編解説してくれていたら良かったのだけど、残念ながらこの祇王のところだけの紹介に留まっている。本来であれば、原作となった古川日出男訳版(河出書房新社)を手元に取り寄せるべきなんだろうが、お手軽にネットに訳を掲載しているサイトがあるのでそちらを参照した。

平家物語自体はいくつかバリエーションがあるそうで、それぞれのサイトごとに元にしている原典が異なる。また、訳の解釈だけでなく、日本語の構成の仕方も訳者によって異なるので、注意が必要。その訳が正しいとは限らない・・・のだが、学会の定説みたいなのが一語一句まとまってる訳でもないし、判断できないので、まあゆるーく読み、違和感あるところは他のサイトと比較しながら読む、ってのが良い感じだと思う。また、ネットに掲載しているのは学者ではなくハイアマチュアな可能性も高い。でもまあ、完全訳文作るぐらいならアマチュアレベルではないだろ、という妥協は必要。

ただし、どうも「訳文には歌の原文は併記しない」というスタンスを取る訳者が多いので、読みづらいというか、逐次原文を辿りに行かなくてはならないのが鬱陶しい。訳だけ書いてあっても風情が無いっちゅうか、歌だけでも五七五七七の原文とセットで訳(解説)を読みたいって人は多いんじゃないのかなあ。

ちなみに、巻番号(巻第一とか巻第二とか)の中で更に細分化されている章(一とか九とか)のことを「段」と呼ぶらしい。この辺も古典文学愛好者には当たり前すぎるからなのか、解説しているサイトがあまり無かった。更に余談だが、巻番号も巻一、巻第一、巻之一、とか表記がバラバラだったりもする。

参照した原典(の訳文) 最初に参照したのは、左大臣光永氏が運営する朗読サイト「左大臣どっとこむ」に掲載されている翻訳。

平家物語 原文・現代語訳・解説・朗読

この方、プロフィールを読むと学習院のドイツ文学科中退で、フリーターみたいなことやってた後に古典文学好きが高じてメルマガ業を興したそうで。今はYoutube中心に朗読を配信してるらしい。そうか、メルマガとかYoutubeみたいな収益化プラットフォームって、一芸に秀でた文学人の生活の一助にもなっていたのだな…。

ここは、小学館版「日本古典文学全集「平家物語」」を原文としている。あらすじ・原文・訳文・解説・コラムが段ごとに1頁にまとまっている。 解説もあってわかりやすいし、比較的読みやすいとは思うが、うっかり訳文かと思ったらあらすじを読んでしまっていたり、原文・訳文・原文・訳文と分割構成になっていたりして、微妙に原文を辿るのに苦労したりする。

ただし、残念ながら途中の巻九で終わっていて、肝心のクライマックスが読めない。飽きちゃったのかな…。

上記が途中で止まってしまったので、次に参照したのは「学ぶ・教える.com」の翻訳。

平家物語(原文・現代語訳) - 学ぶ・教える.COM

上段に原文、下段に翻訳があり、とても見やすい・・・と思ったら、文字数の多い段だと行間が何故か窮屈になっていて死ぬほど見づらい。 そして、こちらも途中の巻十一で終わっている。なんでだよ!

また、最初に平家物語には色々なバリエーションががある、と解説している割には、翻訳している原典が何なのか明示されていない。

最終的にたどり着いたのが、こちら。「日本古典文学摘集」というサイト。

日本古典文学摘集 平家物語

ここは日本古典全集刊行会「日本古典文学全集第一回 平家物語 上巻・下巻」を原文としている。

原文と訳文が別頁構成になっているのだが、なんと訳文にある「`(グレイブ・アクセント)」をクリックすると、原文の該当箇所に飛ぶ!ので、めちゃめちゃ便利。なんでグレイブアクセント記号を使ってるのかは謎だけど。フォントも游明朝体とかも使って見やすいし。

そして何より、アニメ平家物語で取り上げられている「潅頂巻」まできちんと訳されているw

ただし、目次ページへのリンクがフッターに無いのが微妙に使いにくい。ページ上部の「平家物語」をクリックすれば目次に戻れる。あと時折、ページ間のリンクが死んでるのでURL直入力が必要。まあ妥協できる範囲。

最初からこのサイトに辿り着けばよかったのだが。流石に、8割9割訳しておいて、最後は訳されてないサイトがあるなんて思わないよ。

ついでにいうと、どの訳文を読んでも、びわというキャラを立てた理由の「語り手がシーンごとに異なる」というのはよく分からなかった。原作の古川日出男訳版に限ったアレンジなのかな。

1話~9話

冒頭延べたとおり、再視聴の上で、改めて原典を追って追記予定。初期3話あたりはちょうど鎌倉殿の13人もやっていたので、そちらの予備知識を踏まえて視聴していた感じ。

10話

巻第十の「請文」から「維盛入水」、そして有名な那須与一の「扇的」~「遠矢」まで。ただ、重衡引き回しのことも触れられてるので実質は「内裏女房」からなんだろうな。このあたりから平家側は悲哀のエピソードが目白押し。

「請文」~「千手」

重衡は、その前の「内裏女房」での大納言典侍との話だとか、「千手」で梶原景時が涙を流して「あつぱれ大将軍や」と言ったり頼朝からも歌人才人ぶりを評価されたエピソードとか、後に出てくる「戒文」の法然上人とのやりとりとか、かなりグッと来る話が多いのだけど・・・アニメでは尺がなさ過ぎたなあ。牡丹の花という表現が頼朝の口から出てくるに留まっていたのはもったいない。

重衡が斬首されるのは壇ノ浦後なので、10話のこの時点で重衡にそこまで重きを置く訳には行かなかったんだろう。

同じくアニメでは描かれてないが、時忠が後白河法皇からの手紙を運んできた花方に浪方の焼印を押してたりと無茶苦茶やってるw ここは是非アニメ化して欲しかったのだがw 時忠ってのは1話の宴会シーンで清盛に挨拶をしていたキャラ(他の話での登場シーンはまだ未チェック)。

当然、この焼印事件は後で傍若無人な振る舞いとして再紹介されるんだけど、「請文」では焼印押された花方を見て、後白河法皇が普通に笑ってるのが気になる。後白河法皇も相当な畜生やんけ。

「海道下」

アニメには出てこないけど、前にも出てきた逢坂関が再登場。この後ももう1回出てきたかな?どんだけ平家物語は逢坂関好きなんだよ。

「横笛」~「維盛入水」

10話のメインパート?維盛の不甲斐なさを踏まえた上で、悲哀のシーンとして美しく描かれているけどさ。うーん。維盛は・・・仮にも三位中将やぞ?部下を残して逃亡、入水とは・・・。俺たちの宗盛には敵わないけど、武士としては結構酷いよなあ、と思ったり。

公式サイトの各話あらすじ紹介のところに「解説コラム」があるのだが、そこを見ると、武士と言えども粗暴な人間だけでなく優しい人間がいる、とあり、恐らくそういう描写を意図したものなのだとは思うが。

「三日平氏

維盛入水に同舟し、資盛にデコピンされてた出家坊主はここに出てくる舎人・武里。ものすっごい足立区・春日部感がある名前。

原典では維盛入水直後に、頼朝が正四位に昇格。直後に崇徳院を崇めろという話が出てきて、宇宙海賊ミトの大冒険で出てきたやつ(再放送)!ってなった。

なんで唐突に崇徳院を崇めろ?って話になってんの?と思ったが、ちょうどこの7年前(1177年)ぐらいから凶事が立て続けに起こっていて、罪人扱いしていた崇徳院の怨霊問題として後白河法皇が頭を悩ませていたらしい。1184年に崇徳院廊が完成しているが、これが鎮魂のための社で、文中では「社を建てて」と書かれている。

頼朝に接近したことで厚遇された平家(平頼盛)もいた、という話が興味深い。対比的に3日で鎮圧された平家の話を書くあたり、やっぱり平家物語って源氏寄りの話だよなあと。まあ、アニメではこの辺全てカットされてるんだが。

「大嘗会」

これもアニメではカット。栄華を誇ってた平家の光景を紹介するのに、義経を「平家の中でも選ばれないような屑より劣ってる」と表現してて、むちゃくちゃ過ぎて笑ってしまった。

「逆櫓」

ここから「鶏合」あたりまでが四国平定編。このあたりから義経のやりたい放題。後の凋落の伏線というか…終盤は許しを請う描写があるけど、四国平定から壇ノ浦合戦まで通して、やっぱ鎌倉殿の13人の義経像の方が正しいんじゃないの、って気になってくる。アニメはそこまで焦点当ててないのもあって従前の「悲劇の美男子・義経」イメージって感じ。

「勝浦」

アニメで義経が火を放っていたシーンはここの屋島の城攻めの箇所。手前で、源氏方が知盛(もみあげ)を評価するセリフが入っていて、アニメスタッフ的にはやっぱり知盛(もみあげ)をもう少し丁寧に描きかかったんだろうな~とは思ったりした。

冒頭の勝浦ネタ、それから後に出てくる「追津」ネタはセットネタいうか、創作にしても素晴らしいな。逆に、こちらも後に出てくる熊野別当湛増の「鶏合」の話はちょっと古典文学の創作としてはベタすぎるw

「嗣信最期」

知盛(もみあげ)が「たったの七十騎だと!」と叫んでいたのはここ。

「扇的」

そして平家物語の代名詞とも言える、那須与一のシーン。よっぴいてひょうどはなつ、って表現、めちゃめちゃ懐かしいなw

なんで平家側は扇を掲げたのか、いまいちよく分からなかったけど(アニメでは腹立ち紛れとしていた)、実際の所、原典でもはっきりとは書いてなかった。判官後藤兵衛実基は「射ってみろ、という意味ではないかと思うし、義経が射ようとして美女に見とれている間に射ようという意味でもないかと」と語るシーンがある。

原典には船がそれなりに波で揺られてる表現とかもあって、緊迫感が素晴らしい。古文学、なかなかやるな。

扇までの距離七段というのは72mほどとのこと。五輪でのアーチェリーでは70mで統一されてるらしいので、イメージしやすい。でも、その距離で一発勝負で的を射たとか、流石にフィクションがすぎるだろw ちなみに弓道だともっと短く28mらしい。

射抜いた後に源氏側だけでなく平家側も盛り上がったという描写があり、それはアニメでも表現されていた。原典だと感動のあまり平家側は舞を踊る男が現れるのだが、まさかの源氏、それを射って殺すというw

そら「ああ射たり」「情なし」言うよw無茶苦茶だw ここまでアニメで描いてほしかったなあw

「壇浦合戦」

で、メインとも言える壇ノ浦合戦の始まり・・・と思いきや、中身を読んでビックリw ほぼ、合戦直前の義経梶原景時の喧嘩のシーンだけなのなw

もちろんこんなとこはアニメには登場せず。といいつつも、義経が将来暗殺される伏線となる最重要シーンでもある。

「遠矢」

アニメでの琵琶シーンはここから。後半にある「平家は千余艘を」と「源氏の方にも三千余艘」を組み合わせた上で、冒頭の「源平両方陣を合はせて鬨をどつと作る `上は梵天までも聞え下は堅牢地神も驚き給ふらんとぞ覚えたる」のフレーズを歌う。知盛(もみあげ)の「大音声」で10話は終わり。

最終話

「遠矢」から「能登最期」あたり、そして間をすっ飛ばして「六道」~「往生」。

「遠矢」

アニメでは描かれていないが、知盛(もみあげ)が、裏切り者として但阿波民部重能(田口成良)を宗盛に進言するシーンが出てくる。宗盛は結局田口成良を断罪せずに終わるのだが、田口成良は最終的に平家を裏切り、偽装船の情報を源氏方に流すなど、平家の敗北を決定づける。平知盛田口成良の裏切りを知って相当に悔しがる、という描写がなされている。

アニメで、平家方から寝返ったものとしてワンカット登場するのがこの田口成良なんだろう。その裏には結構印象的なエピソードが描かれていた訳で、特に知盛(もみあげ)の武人としての力量の高さを示している内容。この知盛の描写が設定上薄くなってしまったのは勿体ないな~と思った。

ちなみにこの田口成良、主従裏切りという武士として最低の行為を行ったことで最後は源氏から処刑されたとのこと。(斬罪の予定だったがブーブー文句言ってうるさいから火炙りにされたとかw)

「先帝身投」

基本的にアニメで描かれてる通りの展開。琵琶のシーンは「幼き帝」は無かったけど、以後は「能登最期」に出てくる「山鳩色の御衣に鬢結はせ給ひて御涙に溺れ小さう美しき御手を合はせてまづ東に向かはせ給ひて伊勢大神宮に御暇申させ給ひその後西に向かはせ給ひて御念仏ありしかば二位殿やがて抱き参らせて 波の底にも都の候ふぞ と慰め参らせて千尋の底にぞ沈み給ふ 悲しきかな無常の春の風忽ちに花の御姿を散らし情無きかな分段の荒き波玉体を沈め奉る」の部分。原典の差なのか、微妙に表現が違うけど(古川日出男訳版だと幼き帝って言ってんのかな?)。

能登最期」

大納言典侍局(藤原輔子)が神鏡(八咫鏡。原典では八咫鏡を祀っている「内侍所」と称されている)を収めている箱を抱きかかえて入水しようとするが、矢に射付けられて失敗するシーンがある。アニメをよく見たら、ワンカットだけどちゃんと描かれていて「ほえ~」って思った。

アニメにて皆が入水してるシーンでうずくまってるのは宗盛の息子、清宗だろうか。そして宗盛は「ああっ」と捕まった一瞬のカット。

ところが。原典だと宗盛が右往左往してて見苦しいので家来に突き落とされるという話が載っているw(「能登最期」)

おまけに息子の清宗共々、入水後も潔く死のうとしないで泳いじゃったりしてたから、結局捕らわれるというwww

これアニメで描いちゃったら、なんか焦点が宗盛に行っちゃうもんなあ・・・見たかったけど。

「文沙汰」

アニメでは描かれていないのだが、壇ノ浦合戦以後は主に「平家滅亡(宗盛・重衡の処刑、維盛の子の処遇・処刑)」と「義経の没落」が語られていく。

平家は宗盛だけでなく、浪方焼印事件を起こした時忠もなかなか。娘を義経に嫁がせたり、その流れで機密文書を義経から回収してたり(機密文書と解釈されるのが一般的らしいが、私的のヤバい手紙じゃないの?とは思ったり)。そら義経も、京での評判が高まる関係なしに、平家とこんなズブズブになってたら頼朝に疎まれるでしょ。

直前の「能登最期」で、大納言典侍局(藤原輔子)が神鏡の収められた箱を抱きかかえて入水しようとしたが失敗するシーンがあるが、その後、源氏の兵士に開封されそうになったところを時忠が一喝、再び紐を締めて収めたという描写がある。玉葉吾妻鏡ではこの神鏡を守った功績によって最終的に死罪から減刑されたそうな。ただ、まあ、結局は流されちゃうんだが(「平大納言被流」)。

「内侍所都入」

時忠の神鏡繋がりで。「内侍所」「璽の御箱」鳥羽に着かせ給ふという表現がある。「内侍所」は上述の通り神鏡のこと。「璽の御箱」(後段だと「神璽」)とあるのは・・・最初、なんでハンコ?って思ったりした。「神璽」とは勾玉を差すらしい。(勾玉そのものではなく箱が)海にプカプカ浮いていたのを片岡太郎経春という、片岡鶴太郎みたいなのが拾い上げた、という。

実は「神璽」=「勾玉」、というのも学説上ははっきりしていないそうで、日本書紀の「神璽剣鏡」を「神の璽(印)としての剣・鏡」(⇒転じて、格下の勾玉も含めて神璽と総称)と捉えるか、「神璽(勾玉)・剣・鏡」と捉えるか論争になってるらしい。すなわち、平家物語の当該箇所も「内侍所(鏡)」”と”「璽(勾玉)の御箱」ではなく「内侍所(場所)」”の”「璽(鏡・勾玉)の御箱」という解釈も出来る。

この場合、後段で出てくる「神璽は海上に浮かみたる」の「神璽」は勾玉だけを指してるけど便宜上総称としての神璽で記述したとも捉えられるし、時忠が守った箱には鏡だけでなくて勾玉も収納されてて、ゴタゴタの後に最後は海に落ちて浮かんでた、と捉えることもできる。吾妻鏡玉葉を読むとこの下りの正確な解釈が分かるんだろうか。

「副将」

宗盛が、息子・副将と別れを告げる。その後の副将の境遇など、かなり悲しい話ね…。

「腰越」

義経が頼朝と面会しようとしたが、鎌倉入りを拒否られてお預けを食らった、有名なエピソード。宗盛の連行の時だったんだね場所は腰越の萬福寺、とのこと。鎌倉からは少し離れた所にある。

「大臣殿被斬」

宗盛の最期・・・なのだが、まあ、流石というか、なかなかに酷い。頼朝と対面して堂々と答えた重衡とは対極的に、畏まって身を正す姿を見せて、みっともないとか言われてるし、遺体が腐らないように京に近いところまで移動してるのに、もしかして京に戻れるんじゃね?とか期待しちゃってたり。

「重衡被斬」

重衡はついに、ここで処刑される。上述した大納言典侍との最後の別れが悲しい。しかし、寺社を焼き払った結果とは言え、最期は生臭坊主たちにいいようにされてしまったのはなんとも。

「平大納言被流」

上述したとおり、時忠はここで流されることになる。

「昨日は西海の波の上に漂ひて怨憎会苦の恨みを扁舟の内に積み今日は北国の雪の下に埋もれて愛別離苦の悲しみを故郷の雲に重ねたり」って一文が無茶苦茶良い表現なのだよな…。

「土佐房被斬」

アニメで登場した義経ラブな白拍子。ここで登場する「静」(静御前)と思われる。

アニメでは印象的に描かれていたが、原典で静御前が登場するのはここだけ。吾妻鏡の方には義経が暗殺された後に鶴岡八幡宮で頼朝や政子に舞を披露したエピソード(静の舞)やら義経の子をが男子だったので頼朝に殺される話だとか北条政子や大姫からは憐れんだ話やらが載ってるらしい。アニメでは義経のその後を運命を匂わせるためだけの役どころなのだろう。その割には義経の描写は薄い気がしたけど。

「判官都落」

判官(義経)がついに都落ちする。

ここで、「足立新三郎といふ雑色」(安達清常)が登場。頼朝の命を受けて、間者として京に居る義経を見張った。これって思いっきり鎌倉殿の13人の梶原善(善児)やん。

しかも、上述した静御前の子を殺す命も受けたのもこの安達清経だったりする。どうやって殺したのかというと、由比ヶ浜に沈めたと。梶原善も、伊東祐親の命を受けて、八重の子供を川に沈めて殺している。うーん、こんな共通点あるもんかね。

その梶原善、鎌倉殿の13人第11回では伊東祐親暗殺後に中村獅童梶原景時)に雇われることになる。中村獅童って佐藤浩市(上総広常)を暗殺する役なのよね。もしかしてそこでも梶原善が活躍して、その後に中村獅童から安達清常の名前を与えられる、とかだったりして。実は最初期からクライマックスまで登場する重要キャラ?

「六代」~「六代被斬」

維盛の子・六代御前が登場。平家に追いやられた源氏の末裔・頼朝と同じ境遇ということで、対比的に描かれるのがまた趣深い。しかも、あの胡散臭い坊主、文覚が再登場。しかも頼朝の庇護を受けてめちゃめちゃ偉い立場になってるし。

意外なのが、この文覚が六代に肩入れして、頼朝の没するまで、六代を加護していたということ。かなり長い期間よね。結局文覚自身が謀反で流され、その後、六代はやっぱり将来の不安の種として処刑されてしまうのだが。最後まで文覚が出てくるとは思わなかったなあ。

とにかく六代は、平家のオーラスを飾るだけあってというか、自身の意思は関係なく、ただ平家の子としての宿命に翻弄される姿が哀れで印象的だ。

女院出家」~「往生」

アニメ平家物語ではエピローグとして出てきた、出家後の徳子と後白河法皇の対面。これ、原典でも同じくエピローグになっていて「潅頂巻(かんじょうのまき)」という章になっている。

平家物語にも種類があるらしく、「灌頂巻」は「語り本系」の「一方流系(覚一本)」だけに存在するだとか。すなわち、アニメ原作の古川日出男訳版は一方流系(覚一本)ってことなんだろうけど、はっきりしたことが分からん。

アニメだと小綺麗に見えちゃうけど、原典ではかなり侘しい状況に徳子が置かれていて、栄華を誇った平家のその後、まさに「祇園精舎の鐘の声~春の夜の夢のごとし」を印象的に示す重要なエピソードといえる。

平家物語を履修した人だったら、徳子がキーマンだと把握していた訳で、何故徳子にスポットライトが当たっていたのか、びわが徳子と近い関係を取っていたのか、察していたんだろう。何も知らない自分は、なんで徳子をこんなに重用してるんだ?って目で見てしまっていた。松重豊の「早く言ってよ~」レベル。

女院出家」と「大原入」では吉田から人目を避けるように大原へ住処を移す描写がされている。吉田は東山の麓とあるので、京都大学吉田キャンパス(吉田本町)のあたりなのかしら。大原は寂光院。大原という土地は大原ゆい子ネタで知っていた。養鶏が有名なところという理解だったが、まさか平家物語のフィナーレを飾った土地だったとは。

後白河法皇がわざわざこんなところまで御幸するってことは、アニメで描かれていたように、後白河法皇と徳子との関係性は比較的良かったのだろう。原典では後白河法皇自身はボロボロ涙を流しているのだが、冷やかしで来てたら涙なんて流さないだろうし。ただし、御幸自体がフィクションという説もあるらしい。

アニメで最後を飾っていた、菩薩から5本の糸が出て徳子が手に取っていたシーン。これは大原御幸から4年後(文治二年の翌春=1187年~建久二年=1191年)の話で、まさに徳子が往生を迎えるシーン(「往生」の「仏の御手の五色の糸控へつつ 南無西方極楽世界教主弥陀如来本願過たず浄土へ導き給へ とて御念仏ありしかば大納言典侍局阿波内侍左右に侍ひて今を限りの御名残惜しさに声々に喚き叫び給ひけり」)。公式サイトの「解説コラム」にもこの点は触れられている。

まさに、この段落をもって、平家物語(原典)は完結する。アニメはよく11話にまとめきったなあ、と。

ただ、歴史研究だと4年後って本当かよ?実際には御幸から30~40年生きたんじゃね?という話もあるそうで。翌年は源頼朝征夷大将軍に任命されるので、平家の時代を区切る意味合いの演出上、1191年に死んだことにしたんだろうか。まあ、野暮な蛇足だな。

ちなみに今は1192年は「鎌倉幕府が成立した年」って言うと間違いらしい。おじさんおばさんは辛いよ。

アニメにおけるラストシーン

アニメではその後、祇園精舎の鐘の声を複数の登場人物が口にするシーンが出てくる。初見の時は面白いアニメだったーで終わっちゃってたんだけど、2回目だと「あれ!?これ誰だ??」と。

最初の坊さん。これが一番難易度が高い。最初、弁慶?って思っちゃったり。この人物は笛を持っている、でピンとくるかどうか。これは平家物語屈指のシーンである、年端も行かぬ熱盛を泣きながら討った熊谷次郎直実(「敦盛」)だった。熊谷次郎直実は熱盛を討ったことを悔いて、後に出家をしている。持っていた笛は敦盛のもの、ということ。

2番目には上述した静御前。あれ?背景が朱塗りの建物?てことは、鶴岡八幡宮で頼朝・政子の前で舞を披露した「静の舞」のシーンってこと!?

3番目はびわの母、浅葱の方。流石にこれ分からないとかは駄目だろ。

4番目・・・資盛!?なんで入水した資盛が!?って思ったら、どうやら奄美大島に落ち延びたという伝説があり、アニメでは資盛生存説が描かれたということらしい。最初にハイビスカスが描かれていたのはそういうこと。くおー!!これ知ってたら胸アツだったんだなあ!(知らなくても胸アツだけど)

このあたりを見ても、やっぱり学識があるとないとで楽しみ方の深さが変わってくるというか。しっかり作り込まれたアニメだったんだなあと。しかし、熊谷次郎直実をセレクトするセンスよね。素晴らしいわ。

平家物語を通しでみた感想

かなり面白かった。なんでこんな面白いモノがあるなんて教えてくれなかったんだ。

ただ、まあ、やっぱ興味が無いと読まんよね。登場人物も名前が似まくってて誰が誰だかさっぱり分からんし。ただ、有名なフレーズとか歌とか、これ聴いたことあるぞ!っていうのばっかりで、興味云々の前に義務教育で詰め込み学習やっておいた方が、後々の自己学習に役立つのは間違いないな、とも。まあ、一番好きな歌は教科書に出てこない「ひらやなるむねもりいかにさわぐらん柱とたのむすけをおとして」(「五節沙汰」)なんですけどね。欧米で求められるジョークセンスの塊みたいですき。

興味を持つことに一助になるって意味だと、「鎌倉殿の13人」と「アニメ平家物語」が同時期に放送されたってのは取っ掛かりとしては最高だったんじゃないかと。三国志にハマるのに漫画やらゲームやらから入るのと一緒。キャラと名前が一致するの、ホント大事。「平家物語」を知りたかったら「アニメ平家物語」をまず見なさい、と間違いなく言える。言えるほどの立場でもないが。ただまあ、それはやっぱり、アニメ自体の質が高いから、というのが間違いなくある。なんなら学校教育とかで使ってもいいと思うし。鬼滅の刃とか教科書に載せてる場合じゃないだろ。

しかし、全編見るとねえ。やっぱりアニメは尺が短いよ。平家物語、滅茶苦茶面白いエピソードの集合体だし、2クールx2期+劇場版、とか行けたよコレ。今回の本編を補足するような形で追加エピソードをOVAで出してくれないかな。やっぱ重衡とか知盛(もみあげ)のエピソードをもっと見たいよ。