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令和の時代に「のらくろ自叙伝」を読んだ

前回ののらくろ一気読みに続いて、のらくろ自叙伝を読んだ。

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あれ?これって漫画じゃないの?

のらくろ自叙伝、他書と同様にハードカバーだし、てっきり漫画だと思っていたのだが、タイトル通りの文字だけの自伝スタイル。400頁近いボリュームなのでキツイかなと思ったけど(活字苦手マン)、流石の田河水泡。落語調でテンポよく読ませる文章でスルリと読める。そのまま漫画にしても面白かったと思う。

語られているのは野良犬時代から除隊して大陸開発に至る直前まで。てっきり漫画で描かれた描写の補足めいた話が語られているのかな?と思ったのだけども、全く別のエピソードが書き連ねられているという感じ。アニメで例えるならTVシリーズに加えて番外編のOVAが出るような。補完というよりは補強的な感じかな?

後にたい焼き屋に鞍替えするおじさんやお銀ちゃんとは入隊前からの知り合いという体裁になっていて、軍隊時代を通じてお銀ちゃんとのすれ違いのエピソードが記されている他、猛犬連隊の兵隊たち、猿との小競り合いから戦争、更にはブル連隊長とシャモ中佐の権力争い(!)が描かれている。

やっぱり根強い反戦・反軍隊描写

こののらくろ自叙伝、のらくろ中隊長の執筆に先駆けて昭和33年に丸で連載されたものだが、単行本としての刊行は昭和58年(1983年)。時期的にはのらくろ茶店が刊行された後のタイミングになっている。何故その時期まで刊行されなかったのか、というより、よく刊行までこぎつけたもんだ、という感じではある。

戦後執筆ということで、戦前版本編に大きく影響を与えている要素があるとしたら、それは反戦・反軍隊描写の追加だと思う。例えばのらくろが新兵時代からビンタを食らいまくってたとか、悪い上官がいて仕返しに満期除隊時にボコボコにしたとか、更には戦争が起きる度に兵隊が死んでいくことだったり、戦争に否定的な同期兵の存在だったり。ほぼ全編に渡ってヒゲ(元は無骨で良い上官だったが、武器商人に鞍替えして暗躍)が登場するのは、その象徴なんだろう。

除隊についても本編にはあまり描かれなかったが、反戦・反軍隊思想がきっかけとして描かれている。一方で、天涯孤独の身であったのらくろに居場所を与えた軍隊や軍人に対する想いとの葛藤も描かれていて、必ずしも安直な否定で入っていないのが田河水泡ここにありだなあと感じたり。そういったのらくろの葛藤を吹き飛ばすように快く送り出すブル連隊長という存在の描き方もまた巧い。

こののらくろ自叙伝の後に、のらくろ中隊長の執筆が始まる訳だが、この反戦・反軍隊描写は戦後版には強く反映されているのは前記事で述べたとおり。ビンタはその象徴的なエピソードではある。

まあ、反戦描写関係なく、割と平気で相手を殺しちゃってたりもする。これはまだ表現規制がおおらかだったからだろう。 f:id:type43:20210505185947j:plain

不思議な装丁

田河水泡自身による挿絵があって良いのだが(ただしビンタとかぶん殴られてるとことか、逆にのらくろがぶん殴ってるとことか、そんなシーンが妙に多いw)、文章の中段に挿入されているという不思議なスタイル。これも田河水泡のデザイン意向によるものなんだろうか。文章が分断されてぶっちゃけ読みにくいのだけれどもw

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例に出すのもアレだが結構なネタバレ頁。銃殺刑シーンのインパクトは強い。

あとこれは田河水泡関係ないと思うのだが、奥付に印刷時期と発行時期が併記されていた。よくある話なんだろうか。不思議だ。 f:id:type43:20210505185433j:plain

のらくろ自叙伝から見る当時の風俗文化

ここで言う風俗とは「風習」の意味のこと。アレな風俗ではない(アレな風俗描写ってのらくろにはなかった気がする)。昔の漫画は今では廃れてしまった当時の流行歌の替え歌とかが載っていたりして、当時どこまで世間に浸透していたかってのを知る良いきっかけになったりする。

例えば、田河水泡の弟子の滝田ゆうが描いた寺島町奇譚でも、「紀元二千六百年」でタバコの値上げ(=要は物価の値上がり)を皮肉った替え歌が出てくる。現代では「紀元二千六百年」自体の知名度が全くと言っていいほど無いけど、当時は市民に結構浸透していたんだとか、やっぱり国を皮肉った替え歌とか歌われてたんだ、とか感じることが出来る。

そういえば寺島町奇譚にも「のらくろ」を読んで爆笑するおばあちゃんとか出てきてて、あれもどこまで世間でのらくろが浸透していたかの風俗資料になるんだろう。そもそも寺島町奇譚は思いっきりアレな風俗を取り扱ってたな・・・。

脱線したけど、のらくろ自叙伝では進軍ラッパに対してこんなエピソードが記載されている。 f:id:type43:20210505190132j:plain

「大きな猫が、おらのきんたまトッテッタア」。なんちゅう替え歌だ、と思いながらも「~というあいつさ。」と言ってるぐらいだから当時は割とポピュラーだったんだろう。そして昔も今と変わらず、金玉とかそういうのをみんな大好きってことだ。

ここで言う進軍ラッパ、実はそんな名前のラッパはない。一般的には陸軍の「速歩行進(一)」ラッパが進軍ラッパと呼ばれる(八甲田山で有名な雪の進軍のイントロでも使われている)が、メロディと歌詞長が合わないのよね。冒頭のメロディはスキップするとか?

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どちらかと言うと「速歩行進(二)」か「駈足行進曲」が近い気がする。でも前者は演習とか式典用らしいし、後者はシーン的には駆け足ではない。うーん。

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ちなみに「駈足行進曲」は浜松まつりのラッパでも使われている曲。 www.youtube.com

余談

余談だが、とにかくお銀ちゃん以外の女性に対する暴言が酷いw今じゃ落語でも許されんだろうなw f:id:type43:20210505185803j:plain

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